2016年5月9日月曜日

フォント実験

先日読んだフォントに関する本で、「日本語書体はひらがなに特徴が出る」ということが、書かれてありました。それはその通りだろうとは思ったのですが、実際どのくらい違いがでるのか、少し実験してみました。

実験に選んだのは、およそ本文用に作られたと思われる細めの明朝体です。うちにある中から各社の7つを選んでみました。
「游明朝R(字游工房)」「イワタ明朝体オールドM(イワタ)」「ヒラギノW2+游築五号かな(SCREENグラフィック〜)」「本明朝新がなL(タイプバンク-旧リョービ)」「筑紫明朝L(フォントワークス)」「竜明L-KS(モリサワ)」「小塚明朝L」。順不同(最後に答えがあります)。
印象が似ている書体を中心に選びましたが、比較のために異色の書体も入れてあります。

比較に使った文章は、宮沢賢治さんの「ポラーノの広場」です。マックを使っている人には、おなじみですが、フォントファイルを選択した際に出てくる、例の文章の続きになります。

まずは、漢字かな混じりの通常の文章。















引いて見た全体の印象では、それぞれ特徴を出しつつも、比較的似た印象の書体が並びます。そんな中一つだけ、仮名の字面が大きい異色の書体も。

続いて、漢字だけを抜き出したもの(漢字少ないです)




















細かく見比べると、違いはありますが(細い太い、字面の大きさ、ウロコのサイズ等に違いがあります)比較的似た印象です。
フォント帳などで見比べても、漢字だけで何の書体か見極めるのは、難しいかと思います。

最後に、かな(約物含む)だけのもの















一つずつに細かい表情の違いがあると感じます。文字の形、字面の大きさ、フトコロの広さなど、どの書体か分からなくても、フォント毎の違いが分かるかと思います。
例えば、寄って細かく見ると、1行目6文字目「か」だけを見ても、右側の点のハネが柔らかい書体、鋭い書体、ハネ自体が無いもの、など、違いが見て取れますね。








寄ったり、引いたりしながら、見比べていると、細かい違いの積み重ねが、全体の印象を作っているのだと感じます。

今回は比較的似た印象の書体を集めましたが、その中でも仮名に個性があるのが分かりました。
恐らく殆どの人が、意識せずに読んでいるのではないかと思う本文書体ですが、セレクトする側としては、本の内容に沿った、その本に一番合うフォントを選んでいきたいと思います。

以下フォント名です
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A 竜明L-KS(モリサワ)
B 本明朝新がなL(タイプバンク-旧リョービ)
C イワタ明朝体オールドM(イワタ)
D ヒラギノW2+游築五号かな(SCREENグラフィック〜)
E 游明朝R(字游工房)
F 筑紫明朝L(フォントワークス)
G 小塚明朝L

游明朝体と、ヒラギノW2は、骨格が似ている書体が多いですね。実は同じ方が書体を作成しています。この2書体、文字の端を尖らせているのか、丸めてあるのかに大きな違いがあるのですが、「游明朝体」→柔らか、「ヒラギノW2」→シャープな印象はそのあたりから来てるのだと思います。